2009年05月04日

FTA(自由貿易協定)で例外措置を。。

2003年11月24日(月)「しんぶん赤旗」

農業 農民
日本の豚肉を守れ
FTA(自由貿易協定)で例外措置を。。

 日本の養豚業が存亡の危機におかれています。財界の要求を後ろ盾に小泉内閣がメキシコとの「自由貿易協定」(FTA)をすすめ、自動車輸出などと引き換えにメキシコ豚肉輸入の拡大が押しつけられようとしているからです。養豚関係者は「安全でおいしい日本の豚肉生産はできなくなる。関連業者も仕事がなくなる」と訴えます。七十万署名を目標に、“自由貿易”の「例外措置」の運動を強めます。

養豚業者が署名運動

養豚3団体でつくる対策協議会のビラ

 「私たち日本の養豚家は、安全でおいしい豚肉作りに頑張ります」―。国内の豚肉生産に関係する全国養豚協会、全国養豚経営者会議、日本養豚事業協同組合の三団体は「FTA等対策協議会」を結成し、消費者にむけた署名運動をすすめています。

 七月半ばから始めた署名は五十二万を超えたといいます。ビラは「メキシコとの自由貿易協定の交渉のなかで豚肉が関税撤廃品目としての指定を受けると、残念ながら現在の条件下では国内生産は非常に厳しい」と訴えます。

 同対策協議会はメキシコを二回視察しました。ふん尿を砂漠地帯に捨てていたといいます。日本では、環境対策として浄化槽や堆肥(たいひ)舎を来年十月までに数千万円から一億円以上かけて設置しなければなりません

 豚肉の自給率(数量ベース)は一九九五年に61%でしたが、輸入が増えて〇二年度には55%に落ち込みました。全国養豚協会の川口昭平常任理事は、自然条件、人件費や畜舎建設費用に違いがあることを指摘し、「世界中で効率化を追求するが、それぞれの国の違いを認め、自然と共生していく農業生産のあり方があるはずだ」といいます。

 “十月決着”といわれたメキシコとの交渉は、豚肉関税引き下げの日本側譲歩案(価格の高い部分肉の関税を現行4・3%を2・2%に下げ、その対象を五年間かけ七・五万トンにする)が出ましたが、日本の工業製品の要求にメキシコ側が難色を示したことなどで決裂。再開交渉が近く始まります。

 対策協議会では、「メキシコとの間で関税撤廃なら、WTO(世界貿易機関)交渉ではより強大な豚肉輸出国から同等の関税撤廃を求める圧力が高まることは必至」とみて、さらに体制を広げ、自由貿易協定からの豚肉の除外を求めて運動するといいます。

農民連も農水省交渉
 農民連(農民運動全国連合会)と畜全協(畜産農民全国協議会)は、養豚産業の持続を求め農水省交渉を二回実施、「協定の除外」運動を強めています。

 横浜市の郊外で養豚をする安西肇畜全協副会長は、「いま赤字経営でない養豚農家はどのくらいあるか、みんな青息吐息だ。これでメキシコの輸入が増えるとどうなるか」と心配します

 豚枝肉価格は、再生産を下回る水準が続いています。価格安定のため豚肉の「調整保管」という措置が二十五日から三年ぶりに発動となる非常事態です。

 安西さんは、街路樹の枝の繊維を畜舎に敷き、堆肥作りをして耕種農家に還元します。食物残さをエサにする試みに挑み、無添加ハム・ソーセージを加工、販売する一貫経営をします。「養豚はもともとリサイクル性がある家畜です。大規模工業的でなければ生き残れない価格では、安全・安心タンパク源の自給率向上はできない」と訴えます。

FTAとは
多くは例外品目設定
 関税の相互引き下げや撤廃、投資やサービス貿易などの自由化をめざすため二国間や複数国間で結ぶ貿易協定。関税の廃止は原則十年以内としています。二〇〇二年までに世界で百七十二協定が結ばれています。日本は2003年一月に、農産物貿易が問題にならないシンガポールと締結しました。

 今後はメキシコにとどまらず、農産物貿易が関係する韓国、タイなどアジア地域で事前検討と政府間交渉が予定されています。(表1)

FTA.gif




 WTO(世界貿易機関)は、すべての参加国に同じ条件を与えなければなりませんが、FTAの場合は締結国間で排他的に実施します。

 自由貿易地域の定義については、関税などが「実質上のすべての貿易について廃止されている二以上の関税地域の集団」(ガット=関税と貿易に関する一般協定二四条)としています。「実質上」という幅のある表現は、協定の例外を前提にしています。このため、実際の自由貿易協定には、経済主権から判断して、多くの除外品目や再協議(=先送り)品目を設けています。(表2)

(表2)農産物の例外扱いが多いFTA協定資料=農水省
 (除外品目の例)
 (1)北米自由貿易協定(NAFTA)のうち米加間の協定

 【米  側】乳製品、ピーナッツなど(1,199品目中69品目)

 【カナダ側】乳製品、家禽(かきん)肉、卵など

 (1,015品目中35品目)

 (2)韓・チリ自由貿易協定

 【韓 国 側】コメ、リンゴ、ナシ(1,432品目中21品目)

 【チ リ 側】小麦、小麦粉など(729品目中42品目)

 (再協議品目の例)

 (1)EU・メキシコ協定(2003年以降再協議

 【E U 側】牛肉、豚肉、鶏肉など

 (2,415品目中595品目)

 【メキシコ側】米、小麦、牛肉、豚肉など

 (1,081品目中310品目)

 (2)韓・チリ自由貿易協定(ドーハ・ラウンド終了後再協議)

 【韓 国 側】牛肉、鶏肉、マンダリンなど

 (1,432品目中391品目)

関連20万人に影響が
 国内産の豚肉に関連した市場・加工・流通・販売業者は二十万を超えます。国内養豚の縮小・壊滅は、こうした産業に働く中小業者の雇用に直接響きます。

 豚肉枝肉を加工処理する食肉卸問屋の安西畜産(横浜市)の小林敬司業務部長は、「今もスーパーなど要求が厳しく、ぎりぎりの経営。国産豚がなくなればわれわれはすぐだめになる」と話します。

 政府のメキシコFTA研究会報告は“関税が撤廃された北米自由貿易協定(NAFTA)発効以後、メキシコへの日本の製品輸出は四千億円のチャンスを失い三万人分の雇用喪失”などと推計しますが、直接打撃となる農業関連産業の雇用喪失については目をつぶっています。

オレンジ果汁関税撤廃とんでもない
 メキシコとのFTA閣僚協議では、オレンジジュースの関税撤廃の大幅拡大要求がメキシコ側からでてきました(三年後に一万トン―現在数千トン輸入実績)。

 これにたいし、国内で最大のミカン産地、愛媛県農協中央会の伊賀上恒英営農農政部長は、「果汁の関税撤廃の議論はとても受け入れられない」といいます。関税撤廃後はメキシコを迂回(うかい)して、ブラジルなど中南米のオレンジジュースが輸出される事態を心配します。

 果汁や果物は一九八〇年代から輸入枠拡大、輸入自由化が続き、〇二年までの十年間をとるとジュース類は二倍、生果も二割ほど増えています。

 このため、ミカンの木の伐採を迫られました。さらに加工用の価格補てん制度が〇一年から廃止になりました。伊賀上さんは「どうしても加工用にまわさざるを得ない果実は毎年でるが、いまでも産地廃棄せざるをえない」といいます。

財界・多国籍企業の利益優先 メキシコとの間で続けられている自由貿易協定(FTA)交渉は、“双方の国の利益を生む”とのふれこみですが、実態はトヨタ自動車など日本財界の利益中心です。メキシコ側の農業分野の要求にはアメリカ農業多国籍企業(アグリビジネス)のねらいが見え隠れします。

日本―トヨタなど自動車産業
無税輸出枠12万台
 「

メキシコに対する日本の要求は、自動車の完成車を無税で十二万台まで輸出枠をつくれというものだった。メキシコ側は現地生産は歓迎するが、完成車増は拒否した」。交渉の内容を知る立場にある関係者は、そう指摘します。

 対メキシコの乗用車輸出は〇二年には約五万台に急増。国内産業を保護するためメキシコは「自動車令」で輸入を規制しています。この自動車令は、北米自由貿易協定(NAFTA)の規定で〇四年一月から撤廃されるものの、メキシコ現地に工場がないと50%関税となります(日本貿易振興会『2003年版貿易投資白書』)。

 同関係者は、「乗用車工場がメキシコにないトヨタの要求が大きく、そのためメキシコは見返りを望み、農産物では過大な要求をいっている」と分析します。

メキシコ―米農業資本

普通の農家は打撃
農民連国際部長真嶋さんが指摘 農民連(農民運動全国連合会)の真嶋良孝国際部長は、先のWTO(世界貿易機関)閣僚会議時にメキシコを訪れ、農民運動関係者と懇談した経験もふまえ「メキシコの豚肉輸出はアメリカ多国籍企業の影響をうけた一部大規模養豚企業の要求だ」と次のように指摘します。



 農民の協同組合の人たちに会い、日本に豚肉を輸出したいのかと聞くと、「利益をえるのは大規模多国籍の資本を入れた大規模養豚会社だ。普通の農家は自由貿易で苦しめられている」といいました。

 メキシコは豚肉の輸入国です。その大部分は飼料穀物が安いアメリカからです。主食のトウモロコシをはじめ、北米自由貿易協定のため農産物自由化で打撃を受けています。
 アメリカの独占的ともいえる養豚・販売企業のスミスフィールド社が二〇〇一年にメキシコ最大の養豚企業と合弁しました。そうした企業が、メキシコ販売よりも高く売れる日本に輸出するという形です

 メキシコ側は「オレンジジュースの拡大を」と求めてきましたが、その背景をみると、南米に拠点を持っているアメリカの農業多国籍企業、ドール社の存在が浮かびます。

 「自由貿易」といっても、利益は多国籍大企業、苦しめられるのは日本とメキシコの農民であり中小業者、労働者です。

“農業鎖国”発言
農家切り捨ての本音
 小泉首相は、総選挙前に自由貿易協定に関連して「農業鎖国は続けられない。農産物輸入は避けられない」と発言。日本経団連の奥田碩会長も「いつまでも農業鎖国を続けているわけにはまいりません」と応じました。「自給率が40%なのに何が『鎖国』なのだ。農業を切り捨てる本音がでた」と多くの農民や消費者から批判をあびました。

 日本の農産物市場は「鎖国」どころか、農業切り捨て策のなかですでに開放されすぎています。
 ▽日本は、世界最大の食料純輸入国(輸入から輸出をひいた額は三百四十六億ドル=二〇〇〇年)

 ▽日本の農産物関税率は平均12%。EU(欧州連合)全体の20%、韓国62%、タイ35%などに比べても低い。(日本より低いのは大規模輸出国のアメリカ、オーストラリアなど)。
 世界的な食料不足が指摘される二十一世紀に、食料自給率を下げ、海外から買いあさることはできません。


財界のFTA要望
 財界はFTAを強力に推進し、日本経団連会長でもあるトヨタ自動車の奥田碩会長は、FTA交渉の早期締結を再三、主張しています。

 ◇日本経団連(「活力と魅力溢れる日本をめざして」、2003年1月)「日本は『アジア自由経済圏』構想の実現に向け、強いイニシアティブを発揮していく。日本には、自らの手で市場開放を行うという、『第三の開国』を進めていく強い意志が求められる」

 ◇奥田碩著『人間を幸福にする経済』

 「WTOの加盟国はすでに140カ国を超えています。交渉に時間がかかり、また、思い切った自由化やルールづくりが進まないのが現状です。そこで、日本は、WTOを補完すべく、あらゆる国とのFTA締結の可能性を念頭に置き、交渉を積極的に進めていく必要がある」

ニックネーム りぼん。パパ at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 人畜共通感染症(ズーノーシス) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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